《 26年度林棲俳句会 》

林棲俳句会26年度開催日一覧表

◆第86回「池上梅園」◆

風もなく暖かい日でした。
大井町線の池上駅で待ち合わせ、池上梅園に連れ立って行きました。
池上梅園はこの会で二度目の吟行でしたが、初めての方もおいででした。ちょうど紅白梅が盛りで、丘を登り、目の下の梅林を眺め、また、下に降りて丘からの傾斜地に咲く梅を眺めたりして、至福の時を過ごしました。
梅園を出て池上本門寺を参拝し、五重塔の下を通り、本門寺下にある池上会館で句会をしました。

踊り場の多き石段梅薫る      孝子
幼子のかざす指の間枝垂れ梅    建之
曇天やうす紅に透く梅の萼     貞雄
天井の剥落の龍冴返る       了晟
百段に残る寒さや一歩づつ     みよ子
啓蟄の『林棲』二集目上梓せる   のぶ子
鳥が来て人来て日永水飲み場    ゆき子

◆第85回「みなとの見える丘」◆

前日は関東地方にも雪が降り、予報では夜半に激しく降るかもしれないとのことで心配いたしました。が、予報に反して、快晴で温暖な日となりました。まさに吟行日和でした。
みなとみらい線の終点でアメリカ山に出てすぐ、日本で3番目に古い気象台を見ました。前庭ではテレビ撮影のための準備がされていて、思うように見学できないかと危惧しましたが、それでも多くの標準木や水準点を見たり、屋内での気象関係の展示を見たりしました。のち、外国人墓地を経て大佛次郎記念館に入り、猫を愛した文豪の多くの猫の写真、彫像などに囲まれて時を過ごしました。
昼食後、港の見える丘公園の端の霧笛橋を渡って神奈川近代文学館に入り、句会をしました。

梅が香や風速計のよく回る     了晟
春光や日時計きつちり正午指す   のぶ子
わが庭のしばし華やぎ春の雪    建之
春浅しトリコロールの半旗なる   該吉
淡雪の湿り残れるベンチかな    貞雄
連翹のはや咲く海へ傾きて     ゆき子

◆第84回「初句会」◆

大井町駅前の「きゅりあん」で初句会を持ちました。5句の俳句を持ち寄りました。句会の後新年会をしました。
心はみな新年会の方に行っていて、ちょっと低調な句会でした。

八勺の熱燗に酔ふ病癒え      建之
大梁の黙の年月鏡餅        みよ子
街道の天蓋を開け冬欅       貞雄
一月の空や濁りのなき広さ     のぶ子
仲見世の空の華やぐ団子花     了晟
元日の風花金に光りゆく      孝子
寒柝の路地から路地へ暮れそむる  該吉
淑気満つ薩摩切子の深き藍     ゆき子

◆第83回「国立科学博物館」◆

科学博物館は広く、日本館や科学宇宙館など見どころが多く、一同思い思いの館を見て歩き、昼食時に集合。館内の食堂で食事した後、上野の山を桜木会館まで歩き、句会をしました。
ちょっと俳句にはしにくいように見えて、かえって面白い句が生まれそうなところでした。

進化して退化して今コート着る   のぶ子
並びゐてそれぞれ独り日向ぼこ   了晟
鉱石に日本名あり冬あたたか    孝子
恐竜の親子翔けけむ冬青空     貞雄
冬ぬくしアンモナイトの冬の渦   みよ子
古代より麦播き告ぐる渡り鳥    該吉
訃報聞く枝に還れぬ落葉かな    建之
フーコーの時計見る間や暮れ早し  ゆき子

◆第82回「大森山王熊野神社」◆

大森駅の中央口を出て、天祖神社へつづく坂の壁には、かつての大森文士村に住んだ文士たちのレリーフがあります。尾崎士朗、室生犀星、高見順、宇野千代、山本有三、牧野信一、片山広子等など、大勢の顔を見分けながら登り、神社から望翠楼ホテル、大森ホテルなどの跡を辿りながら歩きました。
新井宿の義民六人衆の墓に詣で、直訴しようとしてかなわず、命を落した六人の悲痛な叫びを聞く思いで鶏頭の赤を眺めながら、句会場の山王会館にはいりました。弁当を食べた後、文士村の文献や写真の展示を見てから、句会をしました。

神木の椎に拝礼神の留守      了晟
雑踏に妻を出迎へ夕時雨      建之
鵙の声義民の廟に詣でゐて     該吉
文士村歩く立冬晴れ渡り      孝子
鵙鳴くや神社の森の深々と     貞雄
神の留守餅のやうなる力石     みよ子
呼ばれても知らぬふりして栗を剥く のぶ子
露けさの空き家の増えてをりしかな ゆき子

◆第81回「五島美術館」◆

上野毛の五島美術館を訪ねました。まず、館内の優れた美術品の数々を鑑賞。
陶芸や漆器、絵画、仏像などなどに感動したあと、広い庭園を散策しました。
美術品を見た印象と初秋の木々や草花から受ける印象とで、一同句作に励みました。ここは筆者が初者の頃、「囀りやすこしいびつな赤絵鉢」の句で先生にも認められた所でしたので、懐かしく吟行いたしました。今回は皆さま、私よりはるかに良き句を詠まれていました。
そのあと、知り合いの喫茶店をお借りして句会をいたしました。

私たちの会の仲間、Tさんが急逝されたのは、とても悲しいことでした。彼女の才能を皆で惜しみつつ、黙祷をささげました。

秋深しお茶器に逝きし人偲び     のぶ子
花活けに耳のありけり小鳥来る    貞雄
秋冷や織部の壺のどつしりと     了晟
みんみんや備前徳利に火色見ゆ    孝子
六曲の屏風の花鳥秋澄めり      みよ子

 Tさんの悲報に接し

あめしづくぽつりとおちぬをみなへし 建之
あてどなく石段登る残暑かな     該吉
君なくてキバナコスモスばかり咲く  ゆき子

◆第80回「多摩川せせらぎ公園」◆

梅雨時の雨を想定しての、会場選びでした。雨が降ろうがヤリが降ろうが、俳句に休みはありません。案の定雨降りでしたが、一日中降っているわけではなく、止んでいる間は周囲を吟行できました。
周囲の崖からの湧水が豊富な所で、折から子供たちと付き添いの母親たちが、ザリガニ捕りに興じていました。
昼食の弁当を休憩場でいただき、一同句づくり。午後から句会となりました。たった5人でじっくりと話合う句会にできました。

樹々の間のぽつかりと空き夏の蝶  貞雄
皿数の少なくてよし夏料理     建之
蟻地獄足裏に音の伝わり来     みよ子
滴りの音の静けさ暗さかな     のぶ子
どの道も森へと吸われ青葉騒    ゆき子

◆第79回「太田黒公園、幻戯山房」◆

今回は欠席の方が多く、5人で少数精鋭の会となりました。
ここ太田黒公園に来るのは二度目でしたが、広大な池と立派な庭園に改めて一同感動しました。保存された家屋は年月を経ても往年のままの雰囲気を保っていて、スタンウェイのピアノ、展示された楽譜、執筆された原稿などを見て回り、亡き大田黒元雄を偲びました。善福寺川の傍の店でランチを食べ、句会へ。幻戯山房(角川書店創設者で、俳人・国文学者の角川源義(げんよし)邸宅跡)で角川源義の遺品や机などの展示物を見た後に行いました。
昨日来の雨で傘を差し、レインコートを着ての吟行で、俳句でなければこんなに歩かない、酔狂なものだ、と皆で苦笑したことでした。

ペンの音われを離るる走り梅雨  孝子
四阿に良き時過ぐる梅雨はじめ  のぶ子
心地良き防水靴や緑差す     貞雄
坪庭を埋めつくして竹落葉    該吉
下野草見て足元の濡れてをり   ゆき子

◆第78回「井の頭公園」◆

ゴールデンウイーク狭間の平日でしたので、公園はかなりの人出でした。
広い井の頭公園ですので騒がしいことはなく、仰ぎ見るメタセコイヤ、落羽松の溢れる緑の上の青空や、池の面を泳ぐ残り鴨などをゆったり見物し、吟行できました。
Gさんが会場予約と昼食の手配をしてくださったので、行列などに並ぶことなく食事もできました。

工女たち在りし建屋に風薫る   建之
何待つや四肢をふんばる牛蛙   該吉
行く春やスワンボートの澪光り  貞雄
抱卵に倦みしや浮巣直しをり   了晟
天に地に水に生きもの夏に入る  みよ子
宝鐸草の花の辺りで疲れをり   のぶ子
歳月を経たる静けさ清水湧く   ゆき子

◆第77回「小金井公園」◆

雨は夜のうちにはあがりましたが、地面に座っての花見は無理ということになりました。桜の下でお弁当を食べることは止めて、小金井公園を歩きつつの満開の桜を見ることにしました。小金井では丁度この日から桜祭りが始まったようで、桜が盛りを過ぎた都心と違い、花盛りの桜を心行くまで楽しめました。ここには古木が多いだけに、桜の色も趣深く思われました。建物園に入り、是清邸の2階より窓越しの桜は、硝子窓が昔のものだけに、ぼんやりとして夢幻的な風景でした。昼食は建物園の洋館のテラスでいただきました。午後からは会場を移し、句会をいたしました。

湧水の音の中なるさくらかな  みよ子
清明や青銅の屋根日に映えて  建之
花大根ははその林うめつくし  孝子
清明の雨滴のぽつと頬に落ち  のぶ子
葉の光花の光の花頭窓     貞雄
花大根明治の家の保存され   了晟
初蝶の黄なり紛れず離れゆき  ゆき子

 

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